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ようやっと結論を出した伯父に
「…うん。わかった」
駆もこうなることは分かっていたのか、あっさりと頷き返した
「あなた、どうにかならないの?」
今まで黙っていた伯母が伯父に縋りついている
「…そう言っても、駆の学費のことも考えると、無理だろう」
「…そうね」
これから掛る金額を伯母も考えたのだろう
駆に何か言おうとして何も言えずに俯く伯母に駆は
「伯母さん、気持ちだけで十分。ありがとう。後は、東雲さんと沢木さんと俺の三人でこれからどうするか決めるから」
そう言って、それでいいですよね?と駆は東雲に確認する
「あぁ、そうだな。あんた達が駆を引き取らないなら、これで話は終わりだ。後はこちらで決める。一応、あんた達にも最終的に駆がどこに行くのかは、決まり次第連絡する。あと、駆の両親から連絡があったら俺達にも教えてくれ」
「…わかった。それでは、私達はこれで…」
「待って下さい。一つだけ、言っておきたいことがあります」
これを言うことで彼らの気が変わったとしても、もう駆を彼らのところへ行かせるつもりはない
けれど、彼らの駆を蔑むように見ている目が少しでも変わればと思わず引き留めてしまった。
「駆の両親は確かに多額の借金を負っています。しかし、それは全て連帯保証人となっていたために負ってしまった負債なのです」
「連帯保証人…バカな奴だ」
「全くだな。本当は借りた本人に支払わせたいんだが、当の本人はトンずらしちまっててどうにもなんねぇからな」
駆の両親を莫迦にして笑う二人の間で更に顔を俯かせる駆を見て軽く東雲を睨みつける
駆を追い詰めるために引き留めたわけではないというのに、黙っていると話はどんどん駆の両親の悪口へと発展しかねない
本題へと話を戻すために軽く深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、再び口を開く
「このような多額な借金をした人についてなんですけどね、『矢崎紡』と言うんですが、ご存知ですよね?」
「つ、紡ですって?!」
伯母が素っ頓狂な声をあげる
それも当然だろう。借金をしている『矢崎紡』は彼らの長男なのだから
「紡兄さんが…こんなに借金をしてたの?」
駆にも言っていなかったことだからか、物凄く驚いている
「えぇ、そうです。あぁ、だからと言って貴方達に無理に返済を求めたりはしませんよ。息子さんの借金の肩代わりをして頂けるなら私達にも、駆のご両親にも幸いでしょうが、法律上、私達が貴方達に返済を強制することはできないんですよ」
「紡が…そんな馬鹿な…」
今にも倒れそうな伯母に項垂れている伯父
「信じられないみたいですね。契約書をお見せいたしましょうか?」
「…あぁ、見せてくれ」
何かの間違いだと思いたいのだろう。
しかし、これは事実なのだからどうにもならない。
「これが俺のところの契約書だ」
東雲はポイッと投げるように懐から出した契約書を机に置く
それに続き、自分の持つ契約書も机に並べて置いた
「こちらが契約書です」
親戚夫婦はじっくりと見た後、倒れるようにソファーに身を沈めた
「紡が…借金…しかも、二千万だと…?なんて馬鹿なことを」
放心状態でぶつぶつと呟く彼らに今は何も言う気は起らない
「紡兄さんが…借金なんて…何で?何で借金したの?」
必死にそう聞いてくる駆に何と返していいか迷った末
「…借金の理由はこちらでは把握していないから分からないんだ。ごめんね」
と、誤魔化した。
正直に話してもいいが、ココでする話ではないだろう。これ以上、親戚夫婦に追い打ちをかける必要もない
「何で、父さん達が連帯保証人ってのになってるの?」
「何故と聞かれても、そこの話し合いは本人達に聞くしかないから、分からないね」
そういうと、「そっか」と小さく呟いて駆は俯いてしまった
そんな駆を励ますつもりで軽く駆の頭を撫でてから親戚夫婦に向き直り、
「それでは、息子さんと駆のご両親から連絡がありましたら、すぐに私達に知らせて下さいますよう、よろしくお願いしますね」
最後にそう言って彼らを部屋から追い出した
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