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朝から珍しく東雲が部屋にいる
「お、起きたのか?」
「おはようございます…」
何でこの人がココにいるんだろう?
不思議に思うけれど、今日は沢木の姿はない
きっと、沢木と交代したのかもしれないと納得して
「あ、朝食…準備しますね」
とキッチンへと向かおうとした
が、その前に止められる
「朝食ならもう準備しといたぜ。俺が和食派だから和食にしたが構わないだろう?」
そう言われてテーブルを見て驚いた
日本の朝食というような朝ごはんが並んでいたからだ
「あ…ありがとうございます」
もう既に盛られているご飯と味噌汁
「ほら、座って早く食え」
「はい」
ゆっくりと座り箸を手にして手を合わせる
昔からの習慣を今でもキチンと守っているせいか東雲が意外そうな目をこちらに向けた
「何か?」
「いんや。ほら、時間なくなるぞ」
促されてご飯を食べる
最近朝食はトーストだったからか久しぶりの和食の朝食に少し変な気分だった
「ご馳走様でした」
「オイコラ!残ってるぞ!」
東雲に注意されたけれどもうこれ以上は無理だ
「すみません。けど、もうお腹いっぱいで…」
「…チッ、そんなんじゃ途中で腹が空くんじゃないか?」
「いえ、大丈夫です」
空腹感というのは最近感じなかった
キツイ仕事をしているわけでもないからだろうか?
食器を洗い、出かける仕度を整える
出かけるときはいつも同じ鞄しか持たないので必要なものは出し入れせず鞄の中に入れっぱなしになっている
その鞄をリビングに置いていつでも出かける準備は整った
「それじゃあ、行くか」
東雲にそう促されて部屋を出る
いつもと同じ。そう、馴染みつつある生活
たった一週間なのにこんなに変わるものなんだと自分のことではないようにぼーっと思ってしまった
「ふーん?ココがお前の仕事場か」
「そうです。送って下さってありがとうございました」
俺はココの工場で仕分けの作業をしている
このような仕事で思った以上のお金が貰えるなんてと最初は驚いたけれど、今はココで頑張って働かなければならない
それが、今自分ができる精一杯のことだから
「あ、また夕方迎えに来るからな」
「わかりました。じゃあ、行って来ます」
東雲と別れて工場内に入ると同じ仕事仲間の人たちが声を掛けてくれる
この一週間でかなり馴染んだ人たちだ
今日もまた馴染んだ1日が始まるのだ
そう思ったのに、それは突然だった
もうすぐ今日の仕事も終わる
そんな時分になった頃、最後のゴミだしをしてきてくれとゴミを渡され工場裏のゴミ捨て場へとゴミを持っていく
「…っ君!ちょ、ちょっと!君!」
何かに驚いた様子の警官がこちらに慌ててやってくる
何かあったのだろうか?
「なんですか?」
「君、矢崎駆くんだね?」
「え?そうですけど…」
なぜ時分の名前を知っているのだろう?
「よかった、今すぐ警察に来てくれるかな?」
「え?何で…?」
俺、犯罪なんてしたことないよ?
それとも…両親が?
一歩、警察から逃げるように後ずさる
何で…?ねぇ、何で警察が俺を知ってるの?何で俺が警察なんかに行かなきゃいけないの?ねぇ、なんで・・・?
「矢崎?遅いぞ、どうかしたか?」
後ろから工場長の声がして振り返る
「あ…、その…」
そこでようやく警官も落ち着いたのか
「貴方は矢崎くんのお知り合いですか?」
「はぁ、矢崎はうちの従業員なので」
「従業員?ちょっと、お話をお聞きしたいのですが…よろしいですか?」
こうして警察と工場長と一緒に工場の事務所で話をして数時間
俺はとんでもないことになっていることを知った
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