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叩きつけるような激しい雨と何もかも吹き飛ばしてしまうような強風で外は大変な騒ぎになっている
このまま全てが壊れてしまえばいいのに
そう願わずにはいられなかった
「駆くん、用意はできましたか?」
先日沢木たちが用意してくれた2LDKのマンションに来て2日
この2日は仕事の準備をしていたらしい
今日から俺は沢木が用意した仕事場へ仕事をしに行くことになる
「準備できてます」
風俗などの危険な場所ではなく、まともな仕事だと沢木はいう
東雲は不満そうだったが、渋々納得していた
いったいどんな仕事場なのだろうか?
まだ知らない仕事内容に少し不安になる
俺でもできるような仕事なのだろうか?
学生服しかなかった俺に、沢木が自分の私服を貸してくれた
今はその服を着ているがサイズが一回りは違うので少し大きい
仕方がないので袖を少し折っているが服に着られている感は否めない
「さ、着きましたよ。ココが駆くんの仕事場です」
どうやらどこかの工場のようだ
沢木が仕事内容を説明してくれる
ココはさまざまな荷物が運ばれ、それを仕分けして組み合わせて次の部品を作り、その部品を使う次の工場へと送り出す場所らしい
俺の仕事はその荷物が運ばれてきた物の荷下ろし、仕分け、部品の作成全てに関わる雑用だ
雑用でも仕事があるだけマシだろう
沢木から説明を聞き、その後は工場長がどこで何をしたらいいのかという指示をくれた
1日目、2日目…と経過し、ココでの仕事も1週間が経った
次第に工場内で親しくなった人もでき、少し仕事が楽しくなってきた
「よぉ、元気にしてるか?」
1週間が経った夜、東雲が部屋に来た
「元気ですよ」
1週間ぶりに見る東雲に別に言うことは何もなかったが近況は説明しておくべきかとそう返した
「ふーん?そろそろ辞めたくなったんじゃねぇの?何ならさっさと返せる仕事を紹介してやるぜ?」
ニヤニヤと嫌な笑いを浮かべながら東雲がそう言ってくる
「別に…。仕事なんてしたことなかったから、楽しいし…」
「あぁ、そう?残念」
ぜんぜん残念そうではない顔でそう言う東雲に何が言いたいのか分からず首をかしげた
「まぁ、手っ取り早く返してくれる方がこっちとしてはありがてぇんだけどさ、正直言うと俺も無理に売るのは好きじゃねぇんだよ。だから、今の方が良いって言うならそれで構わねぇよ」
どうやら東雲なりに励ましてくれようとしているみたいだ
「ありがとう。早く返せるように頑張るから」
「あぁ、頑張れよ」
クシャッと髪の毛を無遠慮に撫でられる
「ちょ、ちょっと!東雲さん!痛いんだけど!!」
「ハハッ、こんなんで痛がっててどーすんだよ!男だろ?大体お前細っせぇなぁー?ちゃんとメシ食ってるか?」
「え、まぁ…一応」
最近食欲は落ちる一方で以前に比べるとかなり小食になったと思う
きっとショックが大きかったのだ。
でも、すぐに食事の量も元に戻るだろう
「ふーん?あ、そういやお前学校に行ってたんだっけ?お前の学校には沢木が退学の手配とかしてんだろ?」
「さぁ…?どうなってるんでしょう?」
そういえばあの日から今まで学校についての話は全く聞いていない
どうなったのだろう?
「退学…なのかな?」
「は?そうだろ?」
「うーん?…そう、ですよね?」
退学なんてできるのかな?なんて不思議に思いながらも自分には分からないことなので彼らがなんとかしてくれるだろうと簡単に考える
「お前は学校に行ってて楽しかったのか?」
不意に東雲がそう尋ねてきた
「え?まぁ、楽しかったと言えば楽しかったし、楽しくなかったといえば楽しくなかったかな?」
どうだろう?と今までの生活を思い返す
毎日同じことの繰り返し。
一方的な授業を聞き、ノートを取るだけの場所
仲の良かった奴との他愛無い会話は楽しかったけど、そんなことはどこでも、誰とでもできるのだと、今は知ったからそこまで学校に拘りはない
「へぇ?俺は学校なんて嫌いだったからなー…楽しいってのは分からねぇわ」
「嫌いだったんですか?何で?仲のいいやつと話したり、バカ騒ぎしたり…そういうことするのは楽しくなかったの?」
気になって聞いてみた
「そうだなー…まぁ、半分以上が俺を怖がるやつばっかだったからなー」
「友達いなかったんだ」
「まぁな?一応一人二人は居るけどな?別にそいつらとは学校じゃなくても良かったし、学校をそんなに楽しいとは思ったことねぇな」
「ふーん…」
確かに東雲は強面で、しかも見るからに危険な職業ですという格好をしている
学生時代もこんな格好だったわけじゃないだろうけど、それでも威圧的なオーラを発していたのだろう
「それは、つまらなかったね」
うとうととしながらそう返す
そろそろ眠気が限界。
「もう寝ろ。夜遅くに悪かったな」
東雲はそう言って俺の頭を撫でている
返事をしたかったが、それは叶わず眠気に負けて夢の中へ
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